サックスの選び方|種類・素材・初心者の1本
アルト・テナー・ソプラノの違い、ラッカーと銀メッキの差、マウスピースとリードの考え方まで、はじめてサックスを選ぶときのポイントを整理しました。
サックスは金管楽器のような見た目をしていますが、リード(薄い板状の部品)を振動させて音を出す木管楽器です。指づかいの仕組みが比較的わかりやすく、大人になってから始める人も多い楽器です。
ただし、いざ選ぼうとすると迷う点がいくつもあります。アルトとテナーはどちらがいいのか、素材や仕上げで何が変わるのか、本体だけ買えば吹けるのか。値段の幅も大きく、判断の軸がないまま選ぶと決めきれません。
このページでは、サックスの種類ごとの違いから、素材と仕上げ、マウスピースとリードの考え方、新品と中古の判断、そして本体以外に必要になるものまでを順に整理します。はじめての1本を決めるときの下地として読んでください。
アルト・テナー・ソプラノの違い
サックスにはいくつかの種類があり、よく使われるのはアルト、テナー、ソプラノの3つです。この3つは大きさが違い、それに伴って音の高さ、重さ、扱いやすさが変わります。バリトンサックスというさらに大きなものもありますが、最初の1本に選ばれることはあまりありません。
基本的な性格は次のように整理できます。
| 種類 | 調 | 音域の印象 | 形と大きさ |
|---|---|---|---|
| ソプラノ | B♭ | 高音。細く伸びる音 | 直管型が主流。3つの中で最も小さく軽い |
| アルト | E♭ | 中音。明るく通る音 | 曲がった管。取り回しがしやすい大きさ |
| テナー | B♭ | 低め。太く厚みのある音 | アルトより一回り大きく重い |
アルトとテナーは調が違うため、同じ運指で出る音の高さが異なります。楽譜も種類ごとに書き分けられているので、吹奏楽やバンドでどのパートを担当するかが決まっている場合は、そのパートに合う種類を選ぶことになります。
最初の1本はどれが向くか
特に事情がなければ、アルトサックスから始める人が多い楽器です。理由は単純で、3つの中でバランスが良いためです。テナーほど重くなく、ソプラノほど音程の制御が難しくない。楽器の本数も多く、教材や教則本もアルトを前提に書かれているものが揃っています。
テナーを最初に選ぶのは、吹きたい曲がテナーの音でイメージできている場合です。ジャズやロックで耳にする太い音はテナーであることが多く、目的がはっきりしているなら遠回りする必要はありません。ただし本体が重く、体格によっては構えの負担が大きくなります。可能なら実物を持たせてもらってから決めるほうが確実です。
ソプラノは、直管で管が細いぶん、息の入れ方の少しの差が音程に出やすい楽器です。音を安定させるまでに時間がかかりやすいため、まったくの初心者が最初の1本として選ぶのは避けるほうが無難とされています。アルトやテナーである程度吹けるようになってから持ち替える人が多い種類です。
本体の素材と仕上げの違い
サックスの本体は真鍮(しんちゅう)で作られているのが一般的です。その真鍮の表面をどう仕上げるかで、見た目と音の傾向、そして手入れの仕方が変わります。
もっとも多いのがラッカー仕上げです。真鍮の上に透明な塗装をかけたもので、金色の見た目になります。価格も抑えられ、扱いやすさの面でも標準的な選択肢です。次に多いのが銀メッキで、表面を銀の層で覆ったもの。音が少し落ち着いた印象になると言われますが、感じ方には個人差があります。銀メッキは空気中の成分で黒ずむため、専用のクロスで拭く手入れが必要です。
仕上げによって手入れの方法が変わるのは、他の管楽器でも同じです。ラッカーと銀メッキで磨き方を変える必要がある点は、トランペットの手入れの考え方と共通しています。買う前に、その仕上げをどう扱うことになるのかまで見ておくと後で困りません。
なお、初心者の段階では、仕上げの違いよりも奏者側の要因のほうがはるかに大きく音を左右します。悩んで決められないより、状態の良い標準的なラッカーの1本を選んで練習量を積むほうが現実的です。
マウスピースとリードの考え方
サックスの音は、マウスピースにリードを取り付け、その隙間に息を通すことで生まれます。つまりこの2つは音に直結する部品で、本体と同じくらい重要です。
マウスピースは素材と開き(リードとの隙間の広さ)で分かれます。素材はエボナイトと呼ばれる樹脂製のものが標準的で、多くの楽器に最初から付属します。金属製のものもありますが、鳴らすのに慣れが要るため、最初はエボナイトのままで問題ありません。開きは広いほど大きな音が出しやすい反面、息のコントロールが難しくなります。初心者向けとされる標準的な開きのものから始めるのが素直な選び方です。
リードは葦(あし)を薄く削った消耗品で、硬さが数字で表されています。数字が小さいほど柔らかく、少ない息でも鳴らしやすい。始めたばかりの時期は柔らかめから入り、口のまわりの筋肉がついてきたら少しずつ硬いものへ移るのが一般的な流れです。リードは欠けたり、湿気を吸って反ったりする消耗品なので、常に数枚を持っておき、状態を見ながら使い分けます。
新品と中古の考え方
サックスは価格の幅が大きい楽器です。新品で見ると、初心者向けとされる価格帯から、プロが使うモデルまで数倍の開きがあります。予算を抑えたい場合、中古を検討することになります。
中古を選ぶときに見たいのは、見た目のきれいさではなく、動く部分の状態です。サックスはキイと、その下に付いたタンポと呼ばれる部品で音孔をふさいで音を作ります。このタンポが硬くなったり傷んだりしていると、しっかり閉じずに音が出ません。外見が良くても、タンポの交換や調整に相応の費用がかかることがあります。
そのため、中古を買うなら、個人間の取引よりも、調整して売っている楽器店で選ぶほうが安全です。自分で状態を判断できない段階では、その調整の手間を店に任せる意味があります。逆に、身内から譲り受けた楽器が手元にある場合も、吹く前に一度点検に出してから始めるほうが結果的に近道になります。
同時に必要になるもの
サックスは本体だけでは吹けません。多くの場合ケース、マウスピース、リガチャー(リードを固定する金具)は付属しますが、それ以外に揃えるものがあります。
- リード — 消耗品。数枚まとめて用意しておく
- ストラップ — 首や肩で本体を支える。負担に直結するので体に合うものを
- スワブ — 演奏後に管内の水分を拭き取る布
- クリーニングペーパー — タンポの水分を取る紙
- コルクグリス — 接続部のコルクに塗る
- スタンド — 練習の合間に置く場所。床への直置きを避けられる
手入れの道具を最初から揃えておくのは、面倒を増やすためではありません。管楽器は演奏のたびに内部へ水分が入るため、その日のうちに拭き取る習慣があるかどうかで状態の持ちが変わります。始めた日から続けられる形にしておくのが結局は楽です。同じ木管楽器であるフルートを始めるときに知ることでも、手入れの位置づけは同じです。
もう一点、練習場所も先に考えておく必要があります。サックスは音量が大きく、集合住宅で気兼ねなく吹ける楽器ではありません。時間帯を選ぶ、部屋を選ぶ、練習室を借りるなど、どこで吹くかの当てを付けてから買うほうが安心です。自宅で工夫する余地については楽器を練習するときの防音対策にまとめています。楽器選びと同じくらい、吹ける環境があるかどうかが続くかどうかを左右します。