使わなくなった楽器の手放し方|譲る・売る・処分の比較
弾かなくなった楽器をどうするか。人に譲る、売る、引き取ってもらう、処分するの4つを、手間・費用・向いているケースで比較しました。
押し入れの奥に入ったままのギター、子どもが使わなくなったバイオリン、何年も蓋を開けていないピアノ。楽器は壊れて使えなくなるものではないので、弾かなくなってもそのまま家に残り続けます。捨てるものでもない、かといって使うわけでもない。その状態のまま何年も過ぎている家は、めずらしくありません。
使わなくなった楽器の行き先は、大きく分けて4つあります。人に譲る、売る、引き取ってもらう、自治体のルールに沿って処分する。どれが正解ということはなく、その楽器の状態と種類、そして手間をどこまでかけられるかで向き不向きが変わります。
ここでは、この4つをそれぞれ手間・費用・向いているケースの3点で並べて整理します。どの業者が良いという話ではなく、そもそもどの道を選ぶかを決めるための材料としてお読みください。
まず状態と種類を確認する
行き先を考える前に、手元の楽器がいまどういう状態かを見ておきます。ここを飛ばすと、譲る相手や引き取り先とのやり取りの途中で話が止まってしまいます。
見るのは3点です。1つ目は音が出るかどうか。弦楽器なら弦が張れて音程が取れるか、管楽器ならキイやバルブが動くか、鍵盤楽器なら全部の鍵盤が沈んで戻るか。2つ目は付属品がそろっているか。ケース、弓、マウスピース、電源アダプターなど、本体だけでは使えない楽器は意外と多いものです。3つ目はメーカーと型番で、本体やケースの内側に記載があります。この3点をメモして写真を数枚撮っておくと、どの方法を選んでも話が早く進みます。
状態が芳しくない場合でも、その時点で処分に決める必要はありません。長く弾いていない楽器は、湿気で本来の力が出ていないだけということもあります。特に木でできた楽器は保管環境の影響を受けやすく、ギターの保管方法で触れているように、置いていた場所によって状態の残り方はかなり変わります。
人に譲る
知り合いや親戚、地域の吹奏楽団、学校の音楽部などに譲る方法です。費用がほとんどかからず、楽器がその後も使われるのが見えるという点で、心情的に納得しやすい選び方です。
一方で、手間は4つの中で最も読みにくくなります。相手を探すところから始まり、状態の説明、受け渡しの日程調整、運搬手段の確保まで、すべて自分で進めることになります。相手が遠方なら送料も発生します。
注意しておきたいのは、渡したあとの扱いです。譲った楽器に不具合が見つかったとき、修理費を誰が持つのかで気まずくなることがあります。防ぐには、渡す前に不具合や年数を正直に伝え、「現状のままで」という前提を共有しておくことです。学校や団体に寄贈する場合は、受け入れ可能かを先に確認します。保管場所の都合で断られることもあり、良かれと思って持ち込むと相手の負担になりかねません。
売る
楽器店や買取業者に持ち込む方法で、受け取り方には店頭・出張・宅配の3通りがあります。それぞれ手間の出どころが違います。
店頭は自分で運ぶ方式です。小型の楽器なら最も早く、その場で話が終わります。ただし持ち運べる大きさに限られ、店まで行く時間はかかります。出張は自宅まで来てもらう方式で、大きい楽器や数がまとまっているときに向きます。日程を合わせる必要があり、立ち会いも要ります。宅配は梱包して送る方式です。時間の自由は利きますが、梱包の手間があり、輸送中の破損リスクも自分で織り込むことになります。デリケートな楽器では避けたほうが無難な場面もあります。
どの方式でも、事前に状態と付属品を伝えておくと話がずれにくくなります。逆に、値段だけを先に聞いて回るやり方は、実物を見ないと答えられない部分が大きいため、あまり時間の節約になりません。
引き取ってもらう
値段が付くかどうかにはこだわらず、引き取り自体を頼む方法です。売る場合との違いは、値段が付かない状態のものでも話が進むことにあります。音が出ない、部品が欠けている、年数が経ちすぎている。そうした楽器でも、引き取りなら受けてもらえることがあります。
手間は4つの中で最も小さくなります。多くの場合、日程を合わせて立ち会うだけで終わります。ただし費用は条件次第で、無料のこともあれば有料のこともあります。楽器の種類、状態、運び出しの条件で変わるため、事前に金額の有無を確認しておくのが確実です。ここを曖昧にしたまま当日を迎えると、その場で費用の話になって困ることがあります。
向いているのは、状態に不安があり、かつ家から出すことを優先したい場合です。譲る相手を探す時間はかけられない、でも処分の費用を払うのは避けたい。そうした状況では、まず引き取りの可否を聞いてみる価値があります。
楽器の種類で向く方法は変わる
同じ「手放す」でも、楽器の種類によって現実的な選択肢は変わります。
ギターやバイオリン、フルートのような小型で持ち運べる楽器は、4つのどの方法も取れます。自分で運べることが選択肢の幅につながっているわけです。サックスやトランペットなどの管楽器も同様ですが、マウスピースやリガチャーといった付属品の有無で扱いが変わります。
電子ピアノや電子ドラムは、大きさのわりに分解できるものが多く、脚部と本体を分けられれば運び出せることがあります。ただし電源が入らない個体は、修理を前提とした扱いになるため、行き先が限られます。そして生のアコースティックピアノだけは、他とまったく事情が異なります。
処分にかかる費用
使える状態でない、あるいは行き先が見つからない場合は、処分を選ぶことになります。ここで確認したいのは、楽器が何でできているかです。
木と金属と樹脂が組み合わさった楽器は、多くの自治体で粗大ごみとして扱われます。費用は自治体ごとに定められており、品目と大きさによって決まります。金額も出し方も地域で違うので、お住まいの自治体のごみ分別のページで品目を探すのが確実です。電子ピアノや電子ドラムのように電気で動くものは、粗大ごみで出せる自治体と、別の扱いになる自治体があります。
ただし、処分は最後の手段として置いておくのが現実的です。手放し方を考える段階で真っ先に処分を選ぶと、費用を払ったうえで楽器も残らないという、4つの中で唯一なにも戻ってこない結果になります。子どもの楽器の習い事で使っていた楽器のように、状態が良く年数も浅いものは、まず他の3つを当たってからで遅くありません。
ピアノは他の楽器と事情が違う
アコースティックピアノは、これまでの話がほとんど当てはまりません。理由は重さです。アップライトピアノで200kgを超え、グランドピアノでは300kgを上回るものもあります。1人で動かせる重さではなく、そもそも家から出すこと自体が専門の作業になります。
搬出には、専用の台車と複数人の作業者が要ります。階段しかない2階からの搬出や、玄関から出せずクレーンを使う場合もあり、その条件によって作業の内容が変わります。ここが他の楽器と決定的に違う点で、「引き取ってもらえるか」より先に「そもそも運び出せるか」を確認する必要があります。一般の不用品回収では対応できないことが多く、ピアノを扱う専門の業者に相談することになります。ピアノの買取や搬出を扱う業者を比較したピアノ買取の比較サイトがあるので、どんな業者が対応しているかはそちらにまとまっています。
もう1点、ピアノは長く弾いていなくても状態が保たれていることがあり、逆に見た目がきれいでも内部が傷んでいることがあります。判断は素人には難しいところで、何年も弾いていないピアノの調律にも触れているとおり、まず内部を見てもらってから決めるほうが順序として自然です。値段の見当をつけておきたい場合は、メーカーや年式で条件が変わる部分が大きいので、ピアノの相場の考え方を先に読んでおくと、話を聞くときの目安になります。
4つの方法の比較まとめ
ここまでの内容を、手間・費用・向いているケースで並べます。手間は「相手探しから受け渡しまでに自分が動く量」として見てください。
| 方法 | 手間 | 費用 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 人に譲る | 大きい(相手探し・調整・運搬をすべて自分で) | ほぼかからない(遠方なら送料) | 渡したい相手のあてがある。使われ続けることを重視したい |
| 売る | 中くらい(店頭・出張・宅配で内訳が変わる) | かからないことが多い | 音が出て付属品もそろっている。年数が浅い |
| 引き取ってもらう | 小さい(日程を合わせるだけのことが多い) | 無料から有料まで条件による | 状態に不安がある。とにかく家から出したい |
| 処分する | 小さい(自治体の手続きに沿って出す) | かかる(自治体の定めによる) | 音が出ない。他の3つを当たっても行き先がない |
手間が小さい方法ほど手元に戻るものは少なくなり、手間をかけられるほど選べる幅は広がります。どれを選ぶかは、その楽器にどれだけ時間を割けるかで決めて構いません。
迷ったときは、状態を確認したうえで、まず売ることと譲ることを当たってみて、行き先がなければ引き取りか処分に進む、という順番が無難です。ピアノだけはこの順番より先に、運び出せるかどうかの確認が来ます。