電子ドラムの選び方と防音|自宅で叩くために見るポイント
電子ドラムでも打撃音と振動は出ます。パッドの種類、ペダルの方式、設置スペース、そして階下に響かせないための対策までまとめました。
電子ドラムは、自宅でドラムを叩きたい人にとって現実的な選択肢です。ヘッドホンをつなげば演奏音は自分だけに聞こえますし、生ドラムのように大きな設置面積を必要としないモデルもあります。ただし「電子ドラムなら静か」という理解のまま買うと、住まいによっては使えない時間帯が出てきます。
選ぶときに見るべきところは、パッドの種類、キックペダルの方式、設置スペース、そして振動対策です。この4つは互いに関係していて、どれか1つだけを良くしても満足度は上がりません。予算をどこに割くかもここで決まります。
このページでは、電子ドラムを自宅に置いて実際に叩くことを前提に、見るべきポイントを順に整理します。練習方法そのものについては自宅でのドラム練習の工夫にまとめています。
電子ドラムでも音は出る
最初に押さえておきたいのは、電子ドラムから出る音は「演奏音」だけではないということです。スティックがパッドを叩く打撃音、キックペダルを踏んだときの機構の音、そして床に伝わる振動。この3つはヘッドホンをつないでも消えません。演奏音を絞っても、隣室や階下には別の音が届いています。
特に問題になりやすいのが振動です。打撃音は空気を伝わる音なので、壁や窓である程度は減らせます。一方の振動は床や建物の構造を直接伝わっていくため、距離が離れても弱まりにくく、階下では「ドン、ドン」という低い音として聞こえます。集合住宅で電子ドラムの苦情が出るとき、原因はたいていこちらです。
とはいえ、生ドラムと比べれば音量は大きく下がります。問題は「ゼロにはならない」という点で、これを前提に機種選びと設置の両方を考える必要があります。音がどう伝わるかの全体像は自宅で楽器を練習するときの防音対策で扱っています。
メッシュパッドとゴムパッドの違い
電子ドラムのパッドは、大きくメッシュパッドとゴムパッドに分かれます。メッシュパッドは網状の張り地をヘッドに使ったもので、生ドラムの打面に近い沈み込みがあり、スティックの跳ね返りも自然です。打撃音も比較的小さく抑えられます。多くのメーカーで、中位以上の価格帯から採用されます。
ゴムパッドはゴム素材の打面で、入門機に多く見られます。作りがシンプルなぶん価格が抑えられますが、跳ね返りが硬く、長時間叩くと手首に負担を感じる人がいます。打撃音もメッシュより出やすい傾向があります。
張り地の張力を調整できるメッシュパッドなら、跳ね返りの強さを好みに合わせられます。予算に幅があるなら、まずスネアだけでもメッシュのモデルを選ぶと練習の質が変わります。スネアは打点の数が最も多く、タッチの差が出やすいためです。シンバル類はゴム系の素材が使われることが多く、こちらは大きな問題になりません。
キックペダルの方式(ビーターあり・なし)
キック(バスドラム)の入力方式は、ビーターで専用のパッドを叩くタイプと、ペダルを踏むだけで反応するスイッチ式のタイプがあります。ビーターとは、ペダルを踏むと打面を打つ棒状の部品のことです。
スイッチ式は場所を取らず、価格も抑えられます。ただし踏み心地が生ドラムとかなり違うため、ペダルワークの練習には向きません。ダブルペダルを取り付けられないモデルもあります。将来スタジオで生ドラムを叩く予定があるなら、ビーターで専用パッドを叩くタイプを選んでおくほうが無難です。
一方でビーター式は、踏むたびに床への振動が最も大きく出る部分でもあります。自宅の条件によっては、あえてスイッチ式を選んで振動を減らすという判断もあり得ます。どちらが正しいというものではなく、練習の目的と住環境のどちらを優先するかで決まります。
設置に必要なスペース
電子ドラムは、パッドを支えるラックごと設置します。カタログ上の設置寸法だけを見て決めると、実際に座って叩いたときに手狭になることがあります。
必要なのは、ラック本体の幅と奥行きに加えて、椅子(スローン)を置く分の後方スペース、そしてスティックを振る腕の可動域です。座った状態から後ろに立ち上がれる余裕も要ります。コンパクトなモデルなら畳1枚程度に収まるものもありますが、パッドの数が増えるほど横にも縦にも広がります。
もう1つ見落としやすいのが天井高と、パッドの高さ調整幅です。身長が高い人や、シンバルを高めにセットしたい人は、ラックの調整範囲を確認しておくとよいでしょう。設置後に動かすことも考えて、部屋の出入り口や窓を塞がない位置を選びます。
振動を階下に伝えない対策
振動対策は、機種選びと同じくらい重要です。基本の考え方は、ドラムと床の間に「振動を受け止めて熱に変える層」を挟むことです。
手軽なところでは、厚手の防振マットやカーペットを敷く方法があります。ただし薄いマット1枚では、キックの低い振動は抜けていきます。効果を上げるには、硬い板と柔らかい素材を重ねた台を作り、その上にドラムを置く方法が知られています。板が振動を面で受け、下の緩衝材が吸収する仕組みです。市販の専用ステージも同じ考え方です。
あわせて、ペダルの踏み方を見直すのも有効です。ビーターを打面に押しつけたままにせず、力を抜いて踏むだけでも、床に伝わる衝撃は変わります。それでも、深夜の使用は避けるのが現実的です。集合住宅なら、機材を入れる前に管理規約で楽器の扱いを確認しておくことをおすすめします。
予算帯ごとの現実的な選び方
入門帯は、ゴムパッド中心でパッド数も絞られた構成が中心です。まず叩いてみたい、続くかどうかを見たい、という段階には合います。ただし跳ね返りとペダルの感触は生ドラムと差があり、上達を目的にすると早めに物足りなくなることがあります。
中位帯になると、スネアやタムにメッシュパッドが使われ、ビーター式のキックが選べるようになります。長く使うことを見込んでいるなら、この帯を基準に考えると失敗が少なくなります。上位帯はパッドの反応の細かさやシンバルの表現力が上がる領域で、価格差の中身は主にここです。
予算配分で迷ったら、本体の等級を1つ上げるより、まず振動対策に回すことを検討してください。叩ける時間が増えなければ、良い機種を買っても練習量は増えないためです。なお、購入した電子ドラムが結局使われないまま置かれている場合の扱いは、使わなくなった楽器の手放し方で整理しています。