自宅で楽器を練習するときの防音対策|できることの順番

🏠 楽器と暮らす | 楽市編集部

防音は費用と効果の幅が大きい分野です。置き方の工夫から防音マット、防音室まで、費用の小さい順にできることを整理しました。

自宅で楽器を練習していると、どこかの時点で音のことが気になり始めます。隣で家族が寝ている、階下に人が住んでいる、窓を開けた季節に外へ漏れている気がする。練習したい気持ちと周りへの気兼ねが引っ張り合う状態は、続けるうえでじわじわ効いてきます。

防音は費用と効果の幅が大きい分野です。ほとんどお金をかけずにできることもあれば、部屋を作り替える工事まであります。かけた費用の分だけ静かになるとは限りません。音の伝わり方に合っていない対策は、いくら重ねても手応えが出ないことがあります。ここでは費用の小さいものから順に、置き方、床、窓、簡易防音室、工事と見ていき、最後に集合住宅で先に確認したいことに触れます。

音は空気と振動の2つで伝わる

対策の前に、音の伝わり方を分けて捉えておくと無駄打ちが減ります。音が隣や階下に届く経路は、空気を伝わる音と、建物の構造を伝わる音の2つに分かれます。

空気を伝わる音は、楽器の音が空気を震わせ、壁や窓、ドアの隙間を通って向こう側へ抜けるものです。歌声、管楽器、アコースティックギター、電子ピアノのスピーカー音などが当てはまります。この経路には、隙間をふさぐ、重い素材で遮るといった手が効きます。

構造を伝わる音は、楽器の振動が床や壁に直接渡り、建物を通って別の部屋で鳴るものです。ピアノの脚から伝わる振動、ドラムのキックペダルの打撃、アンプを床置きしたときの低音がこれにあたります。こちらは部屋の壁を厚くしても止まらず、振動を建物に渡さない工夫が要ります。苦情が「音が聞こえる」なのか「ドンドン響く」なのかで、打つべき手は変わります。

まずやる:置き方と時間帯の工夫

費用がかからず、それでいて効果が出ることがあるのが置き方と使い方の見直しです。何かを買う前に、ここを一通り試す価値があります。

置き場所は、隣家と接する壁、集合住宅なら隣戸との境の壁から楽器を離すのが基本です。同じ部屋でも、境の壁の真横に置くのと反対側に置くのとでは聞こえ方が変わります。壁にぴったり付けるのも避けたいところで、これは音だけでなく楽器の状態にも関わります。ピアノの距離や向きの考え方はピアノの置き場所の決め方にまとめてあります。

部屋に物を増やすのも地味ですが働きます。本棚、厚手のカーテン、ラグ、布のソファ。柔らかいものや凹凸のあるものが増えると、音が反射して膨らむのを抑えられます。そして時間帯です。同じ音量でも、昼間に鳴る音と深夜に鳴る音では受け取られ方がまるで違います。練習を日中に寄せられるなら、それだけで苦情の芽はかなり減ります。

床の振動対策(マット・インシュレーター)

階下から苦情が来ている場合、原因は空気の音ではなく床の振動であることが多くなります。ここに効くのは壁ではなく足元の対策です。

考え方は、楽器と床のあいだに振動を吸収する層をはさむことです。ピアノなら、脚を受けるインシュレーター(脚を載せる皿状の器具)に加えて、防振材の入ったマットや敷板を組み合わせます。硬い板を一枚敷くだけでは振動をそのまま床へ渡すこともあるため、柔らかい層と硬い層を重ねた構造のものが使われます。

電子ドラムのように打撃の振動が直接床へ落ちる楽器では、この対策の重要度がさらに上がります。ヘッドホンで音を消しても、パッドの打撃音とキックペダルの振動は残るためです。機種選びの段階から振動の出方を見ておくと後が楽なので、これから買う方は電子ドラムの選び方も合わせて確認してみてください。

窓とカーテンでできること

空気を伝わる音にとって、部屋で一番弱いのは窓です。壁は何層かの構造になっていますが、窓はガラス一枚と隙間でできています。外へ漏れる音を減らしたいなら、まず窓を見ます。

手軽な順に、まず隙間をふさぐことです。サッシの立て付けが甘いと、そこから音が素直に抜けます。隙間テープで埋めるだけでも抜け道は減ります。次が防音カーテンで、これだけで劇的に静かになるものではありませんが、窓を覆う面積があるぶん働きます。丈や幅が足りないと効果が落ちます。

もう一段上げると内窓(二重窓)の設置があります。既存の窓の内側にもう一枚足し、あいだに空気の層を作るものです。工事は要りますが部屋を作り替えるほどの規模ではなく、断熱にも効きます。費用は窓のサイズや枚数で変わるため、見積もりを取って判断することになります。

簡易防音室という選択肢

ここから先は、部屋の一部を専用の空間にする話になります。簡易防音室は組み立て式のブースを部屋に設置するもので、レンタルと購入のどちらもあります。サイズは、椅子と楽器が入る程度のものから、アップライトピアノが収まるものまで幅があります。

利点は建物に手を加えないことです。賃貸でも設置でき、引っ越すときは分解して持っていけます。使わなくなれば手放せます。

一方で考えておくこともあります。床にかなりの重量がかかるため、ピアノを入れるならブースと楽器を合わせた強度確認が要ります。搬入経路も、運び込めなければ設置できません。中は狭いので換気と空調の問題も残ります。費用はサイズと仕様で大きく変わりますが、工事より手前の選択肢です。

本格的な防音工事を考えるとき

部屋そのものを防音仕様に作り替える工事は、いちばん費用がかかり、いちばん効果が出るものです。持ち家で、長くその家に住み、演奏が生活の中心にある。この条件がそろって現実的になります。

中身は、壁・床・天井を二重構造にして吸音材を入れる、防音ドアや内窓に替える、換気経路に消音の仕組みを入れるといったものです。部屋を箱として浮かせ、建物本体に振動を渡さない構造にすることもあります。どこまでやるかは目指す静かさで決まり、ピアノと生ドラムでは必要な作りがまるで違います。

注意したいのは遮音性能の数値の読み方です。カタログ上の値は決められた条件で測ったもので、建物の構造や施工の精度で結果は変わります。数値だけで決めず、施工した部屋を見せてもらう、同じ楽器での実績を聞く、複数社の見積もりで内訳を説明してもらう、といった確認をしてください。

集合住宅で先に確認すること

マンションやアパートに住んでいる方は、着手する前に確認しておくことがあります。ここを飛ばすと、費用をかけたあとで話がひっくり返ることがあります。

最初に見るのは賃貸契約書や管理規約です。楽器の演奏そのものが禁止されている物件があります。可の物件でも時間帯や楽器の種類が決められていることが多く、その範囲を超えていれば、どれだけ対策をしても規約違反は残ります。内窓や床の工事は管理組合の承認が要る場合があり、賃貸なら原状回復の条件も関わります。

次に、近隣への一声です。防音対策そのものではありませんが、効き目は小さくありません。誰が何をいつ弾いているのか分かっている音と、正体の分からない音とでは受け止め方が変わります。それでも折り合わない場合、楽器側を変えるほうが早いことがあります。音量を絞れる、ヘッドホンが使えるという条件は住宅事情では大きな武器で、その違いはアコースティックピアノと電子ピアノのどちらを選ぶかに整理してあります。まず音がどの経路で届いているかを見て、置き方と時間帯を変え、それから足元、窓と順に上げていく。これが費用の面でも効果の面でも堅い進め方です。

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